函館北斗の家

建て主の夫妻は東京にお住まいですが、娘さん一家のすまいに隣接して、あたらしく自分たちのすまいを建てることをご計画されました。娘さん一家のすまいは、シンプルで素朴な外観のなかに、力強い骨組みが見え隠れして、とてもタフな印象を抱かせるすまいなので、隣接して建つことになる夫妻のすまいにも同じような佇まいがそなわると良いと考えました。屋根の勾配をそろえ、同じく板壁の外壁を選択したのも、隣接して建つことの意味を率直に受けとめた結果です。

基本的な生活空間は1階にまとめ、ゲスト用の部屋を2階に配しました。吹き抜け、階段、ホールを中心にすえ、すまい全体に一体感が生まれるように心がけています。大きな切妻屋根もその一体感をより強めているように感じます。

断熱性能は道南で求められる性能としては十分に高く、グラスウールが屋根に400mm、壁に220mm、開口部にはトリプルガラスのサッシが入れられています。断熱によって得られる室内環境の穏やかさが夫妻の生活の豊かさにつながることを願っています。

内装の天井仕上げに使われた羽目板にはちょっとした物語があります。「代々守ってきたこの山の木を、どうにか使ってもらえないか」と山主が大工を訪ねてきたことが事のはじまりです。大工は使い道を考え、製材所が羽目板に加工しました。山からすまいまで、材料の履歴をこれほど明確にたどることができるのは、現在の家づくりの現場では稀なことです。

すまいが出来上がり、外構工事がはじまっています。娘さん一家の敷地には、すまいのほかにも、倉を再生した事務所や物置があり、夫妻のすまいを含めた一連の建物が街並みをつくりはじめています。南側道路に面して、薪棚を兼ねた板塀ができあがると、その感じはより一層はっきりして、風景と呼べるものが生まれるのではないかと、今から楽しみにしています。

■函館北斗の家
所在地    北海道
用途     専用住宅
敷地面積   431.92㎡
建築面積   93.50㎡
延床面積   137.77㎡
構造     木造
規模     地上2階
竣工     2021年11月
設計監理   菅家太建築設計事務所(菅家太)
構造設計協力 山辺構造設計事務所(鈴木竜子)
施工     齋田工務店(齋田綾)

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