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敷地は都心からほど近い閑静な住宅地にある。隣接する公園は木々の緑が豊かで、初めて訪れたとき、大きく茂るケヤキの大木を仰ぎながら、この恵まれた環境を生かした快適な住まいをつくりたいと思った。一方、建主の要望からは、日々の生活や趣味の活動にしっくりと馴染む、落ち着いた住まいを求めていることが感じられた。公園によってもたらされる眺望、採光、通風といった好条件を住まいに取り込み、かつ、不特定多数の人が利用する公園に対していかに落ち着いた空間を確保するのかが主要な課題となった。

室内からは公園の緑とオープンな環境が楽しめ、同時に公園に対しては室内の生活が露出しないようなプラン(平面)を見出そうと模索した。その結果、公園に面して6畳ほどの坪庭を設け、住宅の主要な開口部をその坪庭に面させるプランを採用することにした。これは、室内空間が公園に直接に面するのではなく、坪庭を介して面することで、住まいに落ち着きを確保しようと考えたからである。室内から見たときには公園の緑をまるで自分の庭のように感じられ、同時に、公園に対しては適度な遮蔽感を得ることができ、住宅と公園の間に良い関係性をつくることが出来たと思っている。

もうひとつの課題は、出来る限り自然素材を用いたいという建主の要望を受け、特に断熱材(ウールとゾノトライト系ケイカル板)とその工法についての検討に意を注いだ。広く普及している、サランラップでくるまれたような密閉性の高い室内環境を見直し、かつて土壁がもっていた調湿性能と現代生活に求められる断熱性能を両立させるべく、技術的な面でも丁寧な設計を心がけた。

建物が竣工して間もなく、建主はこの住まいを「楽風庵」と命名した。素敵な名前だなと思うとともに、建主がこの住まいに愛着を感じ始めてくれていると思いとても嬉しかった。あれから2年が経ち、新緑のケヤキの根元のベンチに座り、今度は初めて訪れたときとは反対の位置からこの住宅を眺めてみた。そのたたずまいが周辺環境にとても良く馴染んでいるように思え、あの時考えたことはやはり間違いなかったのだと今あらためて手応えを感じている。

■松庵の家
所在地    東京都
用途     専用住宅
敷地面積   116.42㎡
建築面積   55.65㎡
延床面積   102.20㎡(+小屋裏5.58㎡)
構造     木造
規模     地上2階
竣工     2011年4月
設計監理   菅家太建築設計事務所
構造設計   山田憲明
施工     栄伸建設
写真     鳥村鋼一写真事務所

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