なぜ手で刻むのか

答えは木に聞くのが一番。
ただしそれには、大工による通訳が必要。

材木に墨付けをしてノミで刻む。わずか数十年前の大工にとっては当たり前だったことについて、今も手刻みで家を建てる大工たちは、その理由を答えることを求められている。

天然乾燥(天日干し)の木材の含水率を測り、それなら乾燥機でもっと早くできると人工乾燥をした結果、木は呼吸を失い、粘り強さの無くなった柱や梁はあたかも鉄骨のように扱われています。天然乾燥(干す)と人工乾燥(乾かす)の違い。その差はお日様に干した布団と乾燥機で乾かした布団の違い。その感触の違いは今も誰にでも判るはず。
呼吸をする木材はクセがあり、時として厄介なものですが、木の厄介さを相手にできるのは生身の人間だけです。プレカットの機械では加工できません。なぜ、手で刻むのか。答えは木が知っています。大工の手がその答えを探り当て、私たちに伝えてくれています。

地元のカラマツ製材を使い、手刻みによる木組みの家づくりを続ける木村建設(足寄町)の作業場。
長尺のカラマツの丸太梁が架かる土間に、墨付け前の平角材が並ぶ。

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