レイヤリング 快適なウェアを選ぶ時のように、 素材選びは慎重に。 ポリ袋の中で生活したいと思っている人は、おそらく、いないでしょう。しかし、現在、高気密・高断熱の住宅のほとんどが、ポリ袋の中に仕上げを貼ったような状態になっているといっても過言ではありません。ポリ袋とはつまり、外壁の壁体内結露の発生を防ぐために張られるポリエチレン製の防湿シートのことです。 結露対策としてポリエチレンシートを張る方法は、断熱材を外壁に充填する構法が普及して間もなく、特に寒冷地において激しい壁体内結露が発生し大問題となったことから、その対策として考えだされたものでした。つまり、壁の中に湿気が入らなければ結露が発生しないというわけです。たしかに、結露は発生しなくなりましたが、結果、室内空気がポリ袋の中と一緒という住宅が生まれたのです。 私も初めはそのごとく信じていたのですが、果たしてポリ袋の中での生活が本当に快適と言えるのだろうか、そう迷いました。 アウトドア用品の世界ではウェアはレイヤリングという概念によってつくられていますが、そこで選ばれる素材は必ずと言っていいほど、水蒸気を透す素材になっているはずです。そうでなければ、体中、汗まみれで大変なことになってしまうでしょう。ゴアテックスという素材が重宝されているのもそのためだと思います。 住まいの快適性を考えるとき、建築にも同じ考え方が必要だと思っています。的確な素材の選択と構成によって、水蒸気の透過を妨げず、かつ、断熱性を確保することは可能です。壁の中で結露しなければいいのです。ポリ袋の中で生活する必要はありません。 ポリエチレンシートを使わないことで、壁(天井)に調湿性能を持たせることが可能になります。調湿性能とは水蒸気を吸ったり吐いたりする能力のことです。室内で発生した水蒸気を壁(天井)が吸い、外気や室内空気の状態に応じて吐き出す。室内環境を穏やかに調節してくれるという人もいますが、ポリエチレンシートで覆われた室内より快適さを感じるのはこのあたりが理由なのでしょう。 <トピックス>にもどる☞